君がうたう七つの子
土手を下ると、綺麗な川が流れて両脇に草地と、斜面にはススキが広がっていた。

かつてお菓子や花が置かれていた――今では周りと何ひとつ変わらない場所へと歩く。

目印などなくとも、もう何回と来た場所だから、体が、心が覚えている。

僕は慣れ親しんだ場所の前に膝をついて静かに一本のススキをおいた。

これだけ沢山のススキに囲まれているのだから必要ないんじゃないかと、この光景を見た人は思うかもしれない。

でも僕は、誰のものでもない沢山のススキではなくて、彼女のためのススキをあげたかった。

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