君がうたう七つの子
土手に着いて、再度あたりを見回す。

ここに来るまでも、幾度も繰り返した行為ではあるが念には念をである。

彼女の姿が無いのを今一度確認し、ゆっくりと、慎重に土手の上から下を見渡す。

いないことを願っての行動だったが、彼女はいた。

まだ遅い時間ではなく、そんなに暗くもなっていない為か、昨日見たものと比べると、彼女から発せられている光はとても小さいものだった。

とりあえずはまず、いることは確認できた。

では次は様子を窺ってみようと少し下ると、彼女はあの大きな木の下で横になっていた。


「レイ」


試しに名前を呼んでみるが反応はない。

更に近づいて彼女のすぐ前に立ってみるが、いつも大きく開かれたきらきらとした目は閉ざされていて、無邪気に笑ってからかってくる口からは微かな空気の流れだけがあった。

眠っている。

幽霊でも眠るんだなと驚きながら、彼女をじっと見る。

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