君がうたう七つの子
「そういえば、しょう君。今日」

僕が自身の失敗に落胆していると、いつも通りのレイが思い出したかのように声をあげる。

続く言葉はきっと、僕が土手に来なかったことに関してだろう。

怒るのだろうか、それとも泣くのだろうか、はたまた無視されるか。

これらのどれか一つは当てはまるだろう。

彼女の行動で僕は次の対応を選択しなくてはならない。

その声を、表情を逃さないように僕は身構えた。

「今日は、遅かったね」

「―――――え」

彼女の言葉はあっさりしたもので、表情にも怒りや悲しみなどなく、浮かべているのは笑顔だった。

肩透かしをくらった気分だ。

いや、確かに初めて会った時に実際に僕の肩に手を透けさせた彼女ではあったけども、そうではなく。

僕の予想していた、どの反応にも当てはまらなくて、それらへの対応しか考えていなかった僕は、どうすればいいかわからなくなった。

「今日はって言っても、まだたった二日しか会っていないか

しょう君とは、長い付き合いだと錯覚しちゃうよ」

それは僕も同じだよと思った。


でも言わなかった。

何故だかわからないけど、声が出なかった。言えなかった。
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