君がうたう七つの子
そして、ふるさとの歌が流れると彼女は七つの子をうたいだす。

それは鼻歌だったり、リズムをわざと狂わせたり、彼女の思うがままに歌う。

相変わらず音程がずれたりするが、ここにはそれを指摘するものはいない。

聞こえるのは僕と彼女だけだし、聞いている僕としてはそれも心地いいと思うのだから。

彼女は周囲のことなど気にせずに、のびのびと歌っている。

そういう所は彼女らしいとおもう。

そして聞いている僕は、その時ばかりは手を止めて彼女の歌を聞いている。

彼女の歌っている音を聞き逃さないように、彼女の歌う姿を少しでも見逃さないように。

歌い終わった彼女は、そんな僕を見て少し恥ずかしそうな顔をして、スカートを両手でつまみ綺麗にお辞儀をする。

僕はそれに拍手で応える。

そして、また他愛もないことを話し始める。


今日もそれを繰り返す。
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