君がうたう七つの子
「あっ、でも引っ越したんだものね。

うちの中学は優しい子が多いから、転入生のしょう君にも良くしてくれるよ!」

自分で立ち直った彼女はフォローするように言ってくるが、僕はその言葉に疑問がわいた。

「うん?レイに引っ越してきたって言ったっけ?」

そう、僕の記憶が間違っていなければそんな話はしていない。

個人的な話題もそんなにしないし、したとしたら覚えているはず。

「言われなくてもわかるよ!

ここら辺に住んでるなら同じ中学だろうし、同級生の顔は全員知ってるもの」

僕の顔にクエスチョンマークが浮かんでるのをみて、立ち上がってえっへんと得意げに胸をはる。

わざわざ立ってないものを前に出しても意味ないよと言おうとしたが、ぎりぎりで押し留める。

僕は学習能力を備えているのだから、無駄なことは言わない。

しかし、同級生の顔を全員わかるとは。

あの中学校は確かそんなに小さくない。

よっぽど、顔が広かったのだろう。

ここで過去形を使うことになるのが、悲しくなるほどに。

僕は少し気分が落ちたのを持ち直して、新たな疑問を口にする。

僕の気持ちの機微が、彼女に悟られないように。
< 64 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop