君がうたう七つの子
「もし、僕が下級生だったら知らないんじゃないの?」

彼女はチッチッチと言いながら、人差し指を左右に振る。

「私と初めて会った時、しょう君敬語つかわなかったでしょ。

私より学年が下なら、制服を着てる私を見たらわかるもの。

スカーフが学年で違うしね。」
どうだと言わんばかりの態度だ。

向こうが立って、僕は座っているので見下ろされて、ますますそれが助長されている。

転入先の新たな情報が入ったのは嬉しいが、何となく癪に触ったのでちょっとしたいたずらをする。

「あれ、スカートの下に何かが―――――っあ、ごめん」

描いていた手を止めて、はっとしたように言った言葉は、少々わざとらしかったかとは思ったが、彼女には効果が抜群だったようだ。

「うひゃーーーー」

とこれまた奇怪な声をあげ、スカートを押さえながら座り込む。

若干涙目になりながらも僕を睨む姿に、流石に罪悪感が湧いてくる。

「ごめんっていうのは気のせいだったってことだよ。

何も見えなかったから。」
「本当に?」

「本当に」

「本当の本当?」

「本当の本当」

そこでやっと信じる気になったのか、彼女はばっと音が聞こえるくらいに勢いよく立ち上がる。

「うん、まぁ、わかってたんだけどね。

でも、しょう君があまりにも意地悪するから、ちょっとやり返そうと思って

私って、ほら、その、大人だから?」

髪を耳にかけながらいう彼女の瞳は、先ほどの涙でまだ濡れている。

明らかに嘘だ。

しかし、優しい僕はそれについて何も言わない。

「そうだったのか。

まんまと騙されちゃったよ。凄いね」

「でしょ、でしょう!」

もはや止めていた手を動かし絵を描いていた僕には気づかずに、彼女は嬉しそうにはしゃぐ。
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