君がうたう七つの子
彼女と会った日から毎日土手にきているが、彼女の事故現場に現れる人は見ない。

川の近くで遊ぶ人も見たことがない。

お供えの場所にはいつも新しい花が置かれているけれど、それは早朝に置かれているのか、僕は未だにその人物と対面していない。

僕がなにも言わないことに疑問を感じた彼女は、黙って僕の視線の先を見やると納得したように嘆息した。


「・・あぁ。

私が事故にあってすぐの頃は、そりゃあもう毎日いろんな人がきてくれたよ。

知ってる人も、知らない人もね。

でも、暫くしたらこの通り。

誰も来なくなっちゃった。」

仕方ないんだけどねと笑う彼女は、笑っているのに泣いてるみたいだった。

そんな彼女が見ていられなくて僕は

「今は―――今は僕がいる。それでいいじゃないか」

頭で考えるよりも先に口にしていた。

こんなことは初めてで、どうしたらいいか所在なさげにしている僕に彼女は笑った。

さっきみたいな泣いているような笑顔じゃなくて、顔をくしゃりとさせて。

「そうだね。

今はもう違うね。

仕方ない、しょう君で我慢するかー」

今度はいたずらな笑顔を見せて僕にいう。

いつもの彼女に安心した僕も微笑む。

「レイの方こそ失礼だな。

僕みたいな男はそうそういないよ」

「それをいうなら私だって。

こんなにいい女の子だってなかなかいないよ」

「ジャングルあたりに行けばいそうだけれどね。

群れのリーダーとかやってそうな感じ」

「ちょっと、それどういう意味よ。信じられないなぁ」

お互いにぽんぽんとじゃれ合うように言い合う。
< 67 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop