君がうたう七つの子
最初の頃は流石にここまで会話も続かなかったけど、僕にしては珍しいくらいに打ち解けていると思う。

僕にとってこれ程親しく接していられるのは非常に珍しいことで、戸惑いもあったけどそれも徐々になくなった。

これもレイという女の子の人柄のおかげなのだろうが、相手が幽霊という非現実的な要素も多少はあるのだろう。

しかしある程度仲良くなったとはいうものの、彼女に対する謎はある。

なぜ、自分が死んでしまったところにわざわざいるのか。

以前それとなく場所の変更を提案してみたが、彼女はそれを拒否したのだ。

もう一つ、彼女の家族について。

僕が両親の話をすることはあっても、その逆はない。

一度も。

「そろそろだね」

その声で思考の海に投げ出していた意識が浮上する。

顔をあげて周囲を見渡すともう暗くなっていて、帰る時間になっていた。

「あ、そうだね」

そう言いながら帰る準備をする。

スケッチブックを閉じて、鉛筆を筆箱になおして、それらをバッグに片付ける。

はたかたみると、それは凄くゆっくりとした動作に見えるだろう。

はじめの頃と比べると、どんどん帰る時の準備時間が長くなっていっている。
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