君がうたう七つの子
物が増えたわけでも、手に怪我をしたわけでもない。

外的要因でも、身体的要因でもない。

そうなるのは、そうしてしまうのは、きっと僕の心のせいなのだろう。

彼女と離れ難いとでも思っているのだろうか。

今まで何度も考えてきたが、答えが未だに出ない。

だから今日も僕は未解決の疑問を心にしまって、彼女に帰る準備が終わったことを伝える。

彼女は僕の準備を待っている間歌っていた七つの子を止めて、土手の上へと歩き出す。

時折吹く風が気持ちいい。

どこからかセミのなく声も、昼間ほどではないけどきこえる。

夜になるとセミよりも、他の虫たちの鳴き声が目立つようになってきた。

季節が移り変わろうとしている事を耳で感じながら、二人並んで土手の上に立ち、互いに背中を向ける前にいつものやり取りをかわす。

「じゃあね、また明日」

「うん、また明日」

僕たちは正反対の道へと歩き出す。

僕は家に帰るために。

彼女は―――――

彼女はどこへ行くのだろう。
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