君がうたう七つの子
「前はね、私がここで死んじゃう前ね。

ここの土手は人と笑い声で溢れてた。

夏は虫捕りや川遊び。秋はぼーっとして過ごす人や読書をする人。

冬はコンビニとかで買った肉まんを食べてる人もいたな。

春はお花見。って、桜の木なんてないから、ただの宴会だったけど。

と、まぁ。ここはこの町の憩いの場だったんだよ。

でも、私が事故にあってからは誰もこなくなった。

来るとしても私のお参りとかで、笑い声は聞こえなかった。

そして、次第に人もあまり来なくなって・・・・

そんな時にしょう君が来たんだよ」

僕に背を向けていた身体をくるりと半転させる。

その顔には、さっきまで浮かべていた表情はなく、明るいものだった。

「嬉しかったなぁ。

しかも、私のことが見えるんだもの。

天使かと思ったよ」
まぁ、中身は悪魔だったけどね

とこんな時でも毒づく事をわすれない。

「うん、だからさ。

あの子の言ったことは間違いじゃないんだよ。

それでしょう君が怒ることも、ましてや傷つくこともないんだよ。

そりゃあ、私もショックを受けなかったって言ったら嘘になるけど、仕方ないもの

私はもう納得してるから、大丈夫」

大丈夫って思ってる顔をしてない癖に、そう思ってない癖に、僕の前で強がって。

なんてーーーー

「なんて面倒なんだ」

「え?」

僕の声は聞こえただろうに、意味が理解出来なかったのであろう彼女が素っ頓狂な声をあげる。
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