君がうたう七つの子
「面倒って言ったんだよ。

納得してるなら、何でここにいるの。

ここは君が亡くなった場所だ。

普通なら離れたいだろう。

その上納得してるのなら尚更だよ。

なんでそんな嘘をつくんだよ」

言うだけ言って、彼女の顔が見ていられなくなって僕は俯いた。

もしここでいつものように笑顔を見せられたら怖いから。

まるで、距離を置かれるようで、拒絶されるように感じてしまうから。

「はは。しょう君には敵わないなぁ」

笑い声に顔をあげると、僕の危惧していた表情はそこになかった。

困ったような顔をした彼女がそこにいた。

「うん、今でも怖いよ。

服は水を吸って重いし、動くたびに下に沈んでいくようで。

思い出すだけでも怖い」

「なら―――――」

「それでも――――――それでも、それ以上に私はここが好きなの。

ずっとこの町にいて、ここで季節が変わっていくのを感じた。

それとね、秋になると斜面一面にススキがはえるの。

夕方になったらオレンジに染まって、すごく綺麗なんだよ。」

彼女はそこで一呼吸おいて、あたりを見回す。

かつての、季節によって異なる姿を見せた景色を思い出しているのだろう。
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