君がうたう七つの子
 「行ってきます。」

僕の思っていたより早く片づけは終わり、リビングの片づけをしていた両親を暫く手伝った。

日が暮れてきたのを確認して、両親に軽く散歩してくると伝えて家を出る。

リビングの方も少しは片付き、後は両親の自室が軽く残っている位だったので、なにも咎めらることはなかった。

久々の新鮮な空気を胸に吸い込んで、それをゆっくりと吐き出してから、周囲を改めて観察する。

周りは似たような家が建ち並ぶ住宅街で、当たり前だけど特に朝方見た時と変わった点はない。

あるとすれば明かりを灯している家があるくらいだろう。

今は夏だから陽も長いけど、一応あまり遅くならないようにしようと決めて、僕は適当に歩き出した。


家を出て左へまっすぐに進んでいくと、建ち並んでいた住宅が途切れ、徐々に視界が開けて土手がみえた。

この町に来た時には気づかなかった景色に好奇心を膨らみ、それに合わせて歩くスピードも自然と速くなっていく。

土手の下が見える所まで歩き、見下ろすと大きいとも小さいとも言えない川が流れている。

一見すると普通の川だが、一つだけ普通の川では見慣れないものがあった。

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