君がうたう七つの子
彼女は気付いたのかもしれない。

僕が慰めようとしたことに。

いや、変に聡い彼女のことだ。

気づいたのだろう。

でも、後から言った目的も本音だから.

彼女とはウィンウィンな関係。

対等な取引だ。

だから、感謝なんてすることはない。

僕にとっても得のあることなのだから。

でも、僕はそれを言わなかった。

ここで言うべきではないと思ったし、言わなくてもいいと思ったから。

彼女の笑顔を見れば誰だってそう思うだろう。

その笑顔をわざわざ壊すことなんてしなくていい。

そして、僕はそのまま彼女と別れた。

また明日と言って。

途中で振り返って見た彼女の足取りはいつもより軽やかで、僕も自然と足取り軽く家に帰った。

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