君がうたう七つの子
「いやあ、申し訳ない。

用事を済ませたら、いい時間になるかと思ったんだけど、予定通りに物事はいかないものだね。

所詮は予定は未定で不安定ってことなのかな。

うん?私今、結構かっこいいこと言ったね。

流石、私!やったね、私!

・・・・・えっと、結構待った?」

言葉通りの申し訳なさからか、いつも以上に言葉が多い彼女は、最後に座っている僕の目線にあわせて屈み、窺うようにこちらを見てきた。

「うん。それなりにね。

花火が始まるんじゃないかと冷や冷やしながら待ってたよ。

こんな蒸し暑いのにね」

思わず彼女を擁護しようとする言葉を首もとで飲み込んで、素直に、実直に、率直に言った。

少しの皮肉を付け加えるのを忘れずに。

それなりに待ったのだから、これくらい言う権利は僕にあるはずだ。

「・・・しょう君ってさ、女の子にもてないでしょう。

あと、人を待てない」

至極誠実に言葉を放った僕に対して、彼女は遠慮なく毒を混ぜ込んで打ち返してきた。

本人はうまいことを言ったと思っているらしく、鼻高々にこちらを見ている。

先程までの茹でた野菜よろしくしおれた姿はどこにいったのやら。

氷水で冷やしてしめる時間なんて、無かったはずだけど。

自動冷却を体内に装備しているとしか思えない早業だ。

僕はそんな彼女を再び熱湯にでも放り込んで、しなびさせようと言葉を探す。

僕だってある程度は人を待てるし、女の子には・・・

女の子には少なくとも一人にはもてている。

それは本人も認めていたから、僕の気のせいではないはずだ。

口には出されてないけども、間違いない・・・はずだ。
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