君がうたう七つの子
帰り道。

ちょうど祭りから帰ってきている人のピークと被ったのか多くの人とすれ違ったり、同じ道を歩いたりした。

その顔はどれも笑顔で、祭りでの出来事を忘れないように話しては笑う。

それは友人だったり、恋人であったり、家族であったり。


家族、か。

彼女、レイの両親はどうしているのだろうかとふと思った。

前も疑問には思ったけど、深く考える前にレイに話しかけられて中断したのだ。

目の前で楽しそうに話す子供と、それを優しく見守る両親を見て再び疑問が沸き起こる。

きっと、娘が亡くなったのだから悲しんでいるだろう。

辛いと落ち込んでいるのだろう。

あのお供え場からして、レイが亡くなってそんなに時間は経っていない筈だから、悲しみを乗り越えるには時間が圧倒的に足りない。

いや、実の子が自分より先に亡くなってしまったのだから、それは一生続くことだろう。

その姿をレイは知っているのだろうか、見ているのだろうか。

わからない。

様々な考えが浮かんでは消えていく。

あの花火のように。

でも僕の頭の中はモノクロで、美しいものではなかった。

ただ見ていると悲しく、息苦しくなるものばかりだった。

いつか、知る時がくればいい。

それまではレイと楽しく笑っていればいいじゃないか。

でも、レイのあの雰囲気からして自分で語ることはないのだろう。

少し寂しいけれど、それもまた仕方のない事だ。

彼女が選ぶことだから、僕が口をはさむべきではないんだから。

そうやって相反する気持ちを自分で締めて、慰めて僕は帰り道を歩いた。

その時がすぐに来るなんて、それも思っていた形ではないなんて、考えることもせずに、僕は家へと帰った。


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