君がうたう七つの子
僕がこの日の風景画に一区切りつけようかと背伸びをしたとき、その人は現れた。

スーツは皺一つなく、シャツとネクタイも緩めることを知らないのかきっちりと着ている。

でも、着こなしているとは言えない。

着ている本人の男性はくたびれているようで、足取りは重く、俯いている為表情はわからないが、明るい表情でないのは確かだろう。

そしてその右手には花束が握られていた。

歩みはまっすぐ彼女のお供えの場所に向き、しゃがんで丁寧に両手を添えて花束を置くと、両手を合わせた。

その状態のままでどれくらい経っただろうか。

とにかく長くそこを離れようとしなかった。

そしてようやく彼が立ち上がったとき、ずっと下げていた顔をあげた。

< 95 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop