君がうたう七つの子
僕ははっとする。

今までの行動から、彼女と親しい人物だろうと踏んでいた。

なにせ毎日ここにきては、新しいお花を供えているのだから。

だから、もしかしたら父親かもしれないと。

それはまさにその通りで、僅かに赤くなっている目元は彼女とそっくりだった。

瓜二つと言ってもいいくらいだ。

きっと、彼女が生きていたときは

「お父さんにそっくりですね」

なんて言われて、嬉しそうに笑んだりしたのだろうが、今その顔は悲しみや後悔、疲労、負の感情だけが支配していた。

僕がじっと見ていると、視線に気づいたのか彼もこちらに目をやり少し驚いた顔をする。

僕の存在に全く気付いていなかったのだろう。

そりゃあ、あれだけ下ばかり見ていればそうなるか。

彼はそこを立ち去る時に何か呟き、それから真っすぐ僕のほうに歩いてきた。

今度は顔をあげて。
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