君がうたう七つの子
僕はまさかの展開に呆然として、ただ近づいてくる彼の姿を見ていた。

「初めまして、隣に座ってもいいかな?」

僕に気を配ったのだろう、僕と少し距離のある場所でそう確認してきた。

「あっ、はい。どうぞ」

そうやって言ってきてくれるところも彼女と同じだと思いながら、僕はなんとか口を開く。

それにありがとうと言って隣に座ってきた彼は、先程よりも柔らかい表情になったものの、それでも暗く淀んだものだった。

「驚いたな。ここに人がいるとは思わなかったから。

君はいつもここに?」

「はい。風景画を描きに毎日来てます」

「そうか。他には誰か来たりするかな?」

「・・・・いいえ。僕だけです」

レイの姿が頭によぎったが言わなかった。

言ったほうがいいのか、言わないほうがいいのかわからなかったから、とっさに嘘をついた。

「そうか。やっぱり


変わったものだな、本当に」

僕の答えを予想はしていたが、実際聞くと落ち込んだのか、返答は暗いものだった。

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