君がうたう七つの子
重い沈黙が続き、それに耐えきれなくなった僕は咄嗟に声をあげた。

「そう言うってことは、以前は人が多かったんですか?」

「あれ、君は知らないのか?」

「はい、この夏引っ越してきたので」

本来僕は人見知りで、初めての人と話す事さえ苦痛なのに、その上沈黙が続くとなると耐えきれなくなる。

だから知っている事だろうと、沈黙がそれで破れるのならそうする。

なんだか、後ろめたい気はするけれど。

「ふぅん。そうか。

もしかして、中学三年生?」

「えぇ、そうです」

「そうか。娘と同い年なんだね」

娘とはレイの事だろう。

また彼は黙り込むが、それは先程の沈黙と違い何かを考えてのようだった。

考えてというより、思いをはせる、といったほうが正しいのかもしれない。

それは失われた彼女の”未来”についてなのか、彼女との今までの”思い出”なのか、はたまた彼女の”現在”なのか。

僕にはわからない。

わかるはずもないのだが。

それでも僕は考える。レイの事を。

そして、その彼女を産み、育て、失った彼女の家族を。

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