cherry blossom
和泉side
☆
「...高嶺くん、そ、そろそろ、放して?」
「...悪ぃ」
咲の声で我にかえり、華奢な彼女の体をゆっくり放す。
少しだけ名残惜しい。
「...えっと、急に、どうして...」
さっきこの俺様野郎と呟いた時とは対象的に
無防備に動揺する姿は...なんつーか...
素直に可愛い。
離したくない。
経験したことのない独占欲が俺を支配してるのが分かる。
「心から、俺の前では笑ってくれ」
まるでプロポーズをしているみたいで、
少しだけ顔が火照る。
俺は少しだけ目を細めた。
咲は、少しだけ驚いたように目を見開くと、
ほんのちょっと顔を伏せた。
「...高嶺くんは...」
俺は...?
「...なんでも、ない」
なんでもないってなんだと言おうとしたが
俺は直前で言葉を失った。
それは咲が、
あまりにも綺麗に、せつなげに、微笑んだから...。
...