cherry blossom






汗と血と……春樹さんに触れられた部分が、気持ち悪い。


彼につけたれた体中の細かい傷は


お湯があたるたびにじんじんと痛む。


濡れて黒光りする私の髪は私の上半身に絡みついた。



そういえば、だいぶ髪が伸びたな。


もともと髪が伸びるのは早い方だったけど、


最後に髪を切ったのは一昨年の12月くらいか。




もう、あの頃くらいまで短くすることは ないんだ。




ふと、鏡を見れば傷だらけの体を


震えながら抱きしめる自分が映る。




……今の私をみても





誰も私がステージの上で輝いていたseasonの


ハルキだとは思わないだろうね。


私がハルキだった証。


もともとそんなものは無かった。



メンバーとお揃いのピアスは置いてきた。


私にはもう必要ない物だから。



前は片耳に1個しかピアスの穴は開けてなかったけど、


どれがそのピアスをはめていたのか


分からなくするためかのように


あれからいくつも穴を開けた。


両耳で7個か8個か……。




……






耐えられなかったんだ。


こすってもこすってもとれない汚れみたいに



忘れようとしても忘れられない


消したくてもいつまでも消えない


私がハルキだった証があり続けることに。







……違う。


seasonとして過ごした時間は


取れない汚れなんかじゃない。


むしろ私に与えられた光。




私はその光をみずから遮っただけ。




だって私の中に光があり続ける限り、


私はいつまでもただの「如月咲」に戻れなかった!!








たとえseasonを辞めようと、戻れるわけじゃない。


彼らに出会う前。


お父さんがいてお母さんがいて、


私はただの「如月咲」で………………










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