君だけを見つめてる。〜10年間の純愛ラブストーリー〜
「いや、あの。話したいことがあって。」
恥ずかしそうに下を向くこの女。
あーあー。こりゃ告白だぞおそらく。
「部活行ったから」
「あ、そっか。ありがとう。」
すると、隣にいた先輩が
「じゃあ、終わるまで待と」
「そうしようかなあ」
「あのさ。孝之、きょうはあたしたちと予定あるから。」
「えっ…あ、そうなの。ごめんねなんか」
「うん、まあそういうことだから」
なんであたしが答えてんだろ。
これじゃあたしが孝之を好きみたいだ。
すると、隣の先輩が
「孝之くんの幼なじみだよね?付き合ってはないんだよね?」
「付き合ってはないよ。仲良しの友だち」
「だよね、ならいいの。この子。真紀、孝之くんのことスキでさ。」
そんなことどうでもいいのだ。
「あなたは?」
「え?」
「八代のこと、スキなの?」
「うん、好きだよ」
ああ、やばいな。
あたしは、少し戸惑うかなと思って聞いたのだわざと。
なのにこの女は、当然かのように答えたのだ。
「ちょっと、薫。ほんとごめんね」
「あたしも!あたしも好きだから。」
真紀さんが謝っていて。潤はずっとあたしの後ろにいて。
あたしは真紀さんの声を遮るように言った。
「そっか。じゃあ、お互い頑張ろうね」
そうして、ちょっとした修羅場が終わり。
掃除がおわって、あたしと潤しかいない教室。
「あー。どうしよー。八代は薫さんのことすきなのかな。あー。もうー。」
「うるさいなあ、そんなんならきょう告りなさいよ」
「そんなのできん。絶対すきじゃないもんあたしのこと」
「じゃあとられてもいいの?」
「いやだね。うん絶対。」
「でも、ちゃっかり八代ってモテるのね」
そうなのだ。
八代はちゃっかりモテる。
たぶん、優しいから。
普段はあんまり話さないけれど。
ふとしたときの笑顔とか。
いじめられてる人がいたら誰も味方しなくても味方になる。そういう人だから。
「てか、潤はなんでそんな普通でいられるわけ?ねえ!」
「うるさいなあ。耳元で叫ばないでよ」
「いいの?」
「いいんだよ、言ったじゃん。幸せでいてくれたらいいって。」
「だけどさあ!!!」
「もういいのいいの」
「えー。でも「ういーす」」
そんな変な掛け声とともに、教室に入ってきたのは孝之で。
「なーにが、ういーすだよばか孝之」
「ああん?可愛らしくおつかれとか言えねーのかよ」
「あたしをそんじゃそこらの女と一緒にすんじゃない」
「へいへーい」
ああ、いつもの光景だ。
いつもの、ふたりの言い合い。
ああー。
なんで気づかないのだ愚かなる孝之。
お前にはいつもお前を1番に思ってくれてる女が1番いるだろうが。