Dear.


「誕生日。明日だろ?」

「何で、知ってるの…?」

わたしの誕生日は、五月十四日。

今日は、五月十三日だから、咲真くんの言葉は、正しい。

「まあ、いいじゃん? 俺には、全部お見通しってことで」

咲真くんは、長い前髪を揺らして笑った。

「その腕時計、似合うと思ったんだ。そんなに良いものじゃ、ないけど…」

「あ、りがとう……」

不意に、じわ、とにじむ涙。

わたしは、流れてくる涙に、顔をおおった。

「大切に、するよ…。絶対…。ありがとう……っ!」

泣き止まないわたしの頭の上に、ぽん、と手が置かれて。

「泣くなって。大げさだなぁ」

そのまま、咲真くんは、わたしの頭を撫でた。

「くすぐったいよ…」

「泣き止んだ?」

と、わたしの顔をのぞき込む。

「うん…」

「じゃ、行こ」

頷いたわたしの横で、咲真くんは、歩き出した。
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