Dear.



「ご、ごめんね、咲真くん。わたし、泣き虫で……」

わたしは、目をグイッとこする。

「いや、大丈夫、だけど…」

咲真くんは、不意に、腕を上げた。

ビシッ

「!?」

わたしはおでこを押さえて、呆然と咲真くんを見上げる。

「あんま、泣きはらした目で、こっち見んなって」

「え、それで、デコピンなの??」

「笑って」

「え?」

「泣かないで、笑って」

俺も、泣きそうだから、と咲真くんは、言った。

「っ、うん。ありがとう」

わたしが、なんとかして笑おうと、口角を上げると、咲真くんは、頷いた。

「おっけーだな、良かった」

「うん。ごめんね、運ばなきゃだよねっ!」

慌てて地面の荷物を持ち上げると、咲真くんも慌てて走り出す。

「やばっ、ごめん、走るよっ!?」

「う、うん!」

わたし達は、足をもつれさせながらも、笑いながら走った。




「………っ」

わたし達の姿を隠れて見ていた人がいるなんて、知らずに。
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