Dear.
ღ
「ご、ごめんね、咲真くん。わたし、泣き虫で……」
わたしは、目をグイッとこする。
「いや、大丈夫、だけど…」
咲真くんは、不意に、腕を上げた。
ビシッ
「!?」
わたしはおでこを押さえて、呆然と咲真くんを見上げる。
「あんま、泣きはらした目で、こっち見んなって」
「え、それで、デコピンなの??」
「笑って」
「え?」
「泣かないで、笑って」
俺も、泣きそうだから、と咲真くんは、言った。
「っ、うん。ありがとう」
わたしが、なんとかして笑おうと、口角を上げると、咲真くんは、頷いた。
「おっけーだな、良かった」
「うん。ごめんね、運ばなきゃだよねっ!」
慌てて地面の荷物を持ち上げると、咲真くんも慌てて走り出す。
「やばっ、ごめん、走るよっ!?」
「う、うん!」
わたし達は、足をもつれさせながらも、笑いながら走った。
…
「………っ」
わたし達の姿を隠れて見ていた人がいるなんて、知らずに。