Dear.
体育祭の日に。
ღ
「ふぁ…、いってきます……」
わたしは、小さくあくびをしながら、家のドアを開ける。
「おっはよーっ! みさ〜」
「っ! か、カナ、もぉ……」
「目、覚めるでしよ? おはようございます」
「おはようございます…」
デジャヴのようなカナの登場のあと、わたしは、カナの髪型に目を向ける。
「あ、カナ、ポニーテールだ? 珍しいね」
「あー、うん。動きやすいしねっ、今日はこれでいくよ」
笑顔でポニーテールをぶんぶんと振るカナは、わたしの方を見て、首をかしげた。
「みさは、髪、おろしていくの? 暑いよ? 多分」
「え、そ、そう?」
「うん! せっかくの体育祭じゃーん、盛り上がっていこうよー」
「むむ、そうか……」
今日は、体育祭。
行事大好き人間のカナは、朝からテンションが高い。
わたしは、カナほどでは、ないけれど。
それなりに、楽しみでは、あるんだ。
駅について、電車に乗り込むと、わたし達と同じ体育着の人を見つけて、カナが声をかけた。
「涼ー、こっちこっち」
「和泉くん、おはよう」
「おっはー」
カナがわたし達の近くに和泉くんを呼ぶ。
(そういえば、カナが和泉くんのことを涼、って呼ぶことにも聞き慣れてきたなぁ…)
そんなことを考えながら、挨拶をかわす。