Dear.
✤
そのあと、何もなかったかのように高校の最寄り駅に電車がつくまで、会話を続けたわたし達。
でも、さっき見た、カナと和泉くんの表情が忘れられなくて。
電車を降りて、伸びをする和泉くんを横目に、わたしはもんもんとした気持ちでいっぱいだった。
「みさ、…? どうしたの?」
「カナ、……あのさ、」
「ん?」
カナにさっきのことを聞こうとして開きかけた口を、静かに閉じる。
多分、わたしが知らなくてもいいこと。
わたしが、知らない方が、いいこと。
「ん、なんでもないや。にしても、いい天気だねぇっ!」
「なにー? 急に、どしたの?」
ケラケラと笑うカナに、やっとわたしも笑顔になった。