Dear.



そのあと、何もなかったかのように高校の最寄り駅に電車がつくまで、会話を続けたわたし達。

でも、さっき見た、カナと和泉くんの表情が忘れられなくて。

電車を降りて、伸びをする和泉くんを横目に、わたしはもんもんとした気持ちでいっぱいだった。

「みさ、…? どうしたの?」

「カナ、……あのさ、」

「ん?」

カナにさっきのことを聞こうとして開きかけた口を、静かに閉じる。

多分、わたしが知らなくてもいいこと。

わたしが、知らない方が、いいこと。

「ん、なんでもないや。にしても、いい天気だねぇっ!」

「なにー? 急に、どしたの?」

ケラケラと笑うカナに、やっとわたしも笑顔になった。
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