Dear.
思っていたことを見透かされたようで、ビクン、と動いてしまった肩。
「ごめん、びっくりした?」
「う、ううん。咲真くんは、何でわたしが明日香ちゃんを探してるって分かったの?」
「いや、二人とも選手なのは知ってたから。明日香も今野のこと気にしてたし」
「そ、そうなんだ…?」
「うん」
そっか。明日香ちゃんはここにはいないのか。
…何か良かったぁ。
何でかは分からないけど。
多分、負けるのが怖いんだ。
「短距離走が、まもなく始まります。選手の皆さんは、準備をしてください」
突然、アナウンスが入る。
「頑張れ、今野」
「うん。ありがとう!」
笑顔の咲真くんにお礼を言って、わたしは、自分のレーンに着いた。