Dear.
足がゴールラインを踏む。
少し走り抜けてから、きょろきょろと辺りを見回すと、どうやら、前には人はいないようで。
一位?
まさかの?
嘘だあ…。
呆然としていると、咲真くんが手招きしているのが見えた。
「速っ! 13秒台だって。さすが」
一位の人はこっちね、と誘導してくれながら、咲真くんが笑う。
「え、うそっ」
「おめでと。多分、陸部にスカウトされるよ」
「あ、あらら…」
「でも、ホント、おめでとうございます」
じゃあ、と係の仕事に戻っていく咲真くんに、笑顔でVサインを送ると、咲真くんも笑顔でVサインを返してくれた。