Dear.

「美味しー! やっぱプレミアムは違うわ」

幸せそうな顔でアイスを食べるカナ。

わたしはカップのバニラアイスを食べながら流れる汗を拭う。

「にしても、暑いよね」

「だねぇ。何か、ムシムシする〜。雨降んのかな」

何気なくカナがこぼした言葉に固まってしまう。

「…あ、みさ……」

目を見開いたカナがこちらを見る。その表情に胸が痛くなった。

「う、ううん。全然、大丈夫、大丈夫だから…」

急いでアイスを食べる。アイスの冷たさに気持ちが整理されるような気がした。

ーわたしは、雨が苦手だ。

あの日を思い出してしまう気がするから。

だから、梅雨の季節はあまり好きじゃない。

いつも、憂鬱な気分で雨が降らないことを願わないといけないから。

でも、それはカナが気にすることじゃない。カナを不安にさせちゃ、駄目だ。

そう思って顔を上げると、こちらを見ていた咲真くんと目が合った。


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