Dear.
電車に乗ってうとうとしていると、体の前にすっと影が下りて。

「おはよ」

「…おはよう…?」

ぼんやりとした意識で適当に返してしまった。

はっとして意識を覚醒させると、つり革を持って笑う咲真くんが立っていた。

「…っ! 咲真くん…」

「可愛いね、寝起きの今野」

「…な…っ」

手で顔を覆う。

なんて事だ。咲真くんに寝ているところを見られてしまった。

「ごめん、からかうつもりはなかったんだけど…」

ーいや、咲真さん。からかうつもりがなくて素でそう言ったのであれば、そっちの方が問題です。

指の間から目だけを出して、恐る恐る咲真くんを見上げる。

相変わらず綺麗な顔で笑う咲真くん。

でも、昨日から、その笑顔が優くんと重なって。

わたしは、よく分からなくなる。

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