Dear.
なおも振り続ける雨と。

目の前の横断歩道の白線が。

あの日の光景と重なってしまう。

(違う、違う、違う……っ)

今は、"あの日"じゃない。

霞む目の前に、半ば縋るように首を振る。

と、そこへ。

1台のトラックが入ってきた。


「嫌………」


スローモーションのように、やけにゆっくりと。

それなのに、目に焼き付くように、リアルで。

『美咲っ!!』

優くんの声が蘇る。

あの日、見た車。

優くんの命を奪ったトラックと同じもの。

ぐにゃりと、視界が歪む。

わたしは、もう立っていられなかった。
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