ミラージュ
「くじあめ?」
「知らんそ?あの紐の先に砂糖飴がついちょるんよ。引っ張るまで何味かわからん。たいていイチゴが多いんじゃけどな」
何やら大量の駄菓子を手に持った良平は、そのままレジに向かった。ザラッとそれらを置き、「ばーちゃーん!くじあめ勝手にやるけぇねー」と叫ぶ。
「やるん?」
「何か久しぶりにやりたくなった。ナツもやりぃや」
「あたしお金持っちょらん」
「は?20円もないそ?」
「だって昼にパン買ったんじゃもん」と頬を膨らませるあたしを見て、「しょーがねぇなぁ」と笑った良平は、ポッケから40円を取り出してレジに並ぶイカ焼きのタッパーの上にチャリッと置いた。
「優しい良平様がおごっちゃる」
笑顔を見せる良平に、「20円じゃあんま有り難みないね」と憎まれ口を叩いて横に並んだ。
「どの口が言うかっちゃ!」とあたしの頬をつねる良平。
「痛い痛いっ」と笑いながらも、胸の高鳴りは容赦なくあたしを締め付けた。