ミラージュ

「お前知っちょる?くじあめの秘密」
「秘密?」

唐突な良平の問いにあたしは小首を傾げた。

「知らんそ?女ってこういうん好きなんじゃないん?」
「知らんよ。何なん?」
「このくじあめを好きな人と一緒にやって、お互い引っ張った紐が途中で絡まってたら、それは運命なんじゃって。ほら、こんなに紐がうじゃうじゃ入っちょったら、たまぁに絡まっちょるんもあるんちゃ」

視線を良平からくじあめに移す。確かにこんなに大量の紐が一つの袋に入っていたら何本かは絡まってそうだ。

「一緒にやるんがナツじゃけぇなー」
「ちょっとそれどういう意味よ」
「まぁええや。ほら、引けよ」

少し口を尖らせながらもあたしは紐を選ぶ。良平はもう決めていて、「早く選びぃ」とあたしを急かしていた。

冷静を装いながらも、頭の中にはさっきの良平の言葉がはっきりと浮かんでいた。
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