ミラージュ


『お互い引っ張った紐が途中で絡まってたら、それは運命なんじゃって』


…そんなのただの噂に決まってる。わかりきってるのに、この紐があたしの運命を本当に知っている気がしてくる。無意識に、良平の選んだ紐と絡み合ってそうな紐を探そうとしている。

「ナツー」
「わ、わかっちょるっちゃ!…これにする」

急かされて、あたしは思わず良平の紐に近い紐を選んだ。その行動の意味を良平が推測しないでくれることを祈る。心臓、うるさい。

「ほんじゃ引っ張るか」
「…うん」
「せーのっ」



手が、震えた。














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