Voice Story.
始まり

生まれたその日、私は声をあげなかったと言う。




「落ち着いて聞いてください、娘さんは──────」







喉頭横隔膜症、 生まれつき声が出せない障がいである。

それを持って生まれてきた私。別に誰も恨んでなんていない....

だけど、それでもお母さんに何度か泣きながら謝られた事がある。




『お母さんのせいじゃないよ、泣かないで』

そう声に出して言えればどんなに良かっただろうか─────────










朝、目が覚める....

『夢、かぁ....』


トントンと階段を下りて母たちがいるリビングへ向かう。


「あら、朋美おはよう」

『おはよー』


口をパクパクさせて伝える

「ふふ、髪がボサボサよ?朝ご飯のまえに整えてらっしゃい」

『わかった』

母に言われ私は洗面だいの前に立ち、髪を整え制服に着替え再びリビングに戻った。


今日から春休みが終わり、高校2年になった。

新学期はクラス替えがある、前のクラスの皆は声が出せない私を何となくだけど....それでも受け入れてくれてた。

そんなクラスだったらいいなぁ....



私は用意されていた温かい朝食を食べて父と話していた。私は自分のスマホに文字を打ちそれを父に見せる。

「朋美、お前今日大丈夫か?」

『うん、大丈夫だよ』


「なにかあったら直ぐに言うんだぞ」

『わかってるよ、ありがとう』


父は結構心配性なところがある。お父さんが想像しているより酷いものじゃないし私は普通に学校生活をしている。

友達も少ないけどいるし。


朝食を食べ終え私は鞄を持って立ち上がる。


『行ってきます』

口パクでそう伝え家を出た。
< 1 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop