彩華
「ここか?」

 その頃、牡丹楼の裏手に、三人の男が集まっていた。
 若者二人と、大柄な男だ。

 男たちは牡丹楼の二階の一部屋を見上げた。
 楽しげな笑い声と三味線の音が聴こえている。
 光がちらちら揺れているのは、回り灯籠のせいだろう。

「あそこです。賑やかなうちに襲ったほうがいいでしょう」

「そうだな。かなり長い間居続けているようだし、時間関係なく飲んだくれているだろうから、殺るなら今がいい」

 頷き合うと、三人は裏手の戸を引き開けた。
 表から入ると、遊女がわらわらいて邪魔なのだ。

 こういう者が刀を引っ提げて入ってくることは、ここでは珍しいことではない。
 行き合った店の者も、少し驚くだけで、すぐに脇に避けて道を開ける。
 そうなる元凶が二階にいることもわかっているのだ。

 誰に邪魔されることもなく、男たちは目的の部屋へと辿り着いた。
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