彩華
 しぱん! と開けられた障子に、部屋の中の遊女が目を向ける。

「紫苑。お楽しみのところ邪魔するぜ」

 一番に部屋に入った大柄な男が、乱れまくってほとんど脱げている着物のまま遊女と戯れている紫苑に言った。
 後ろに控えた二人の若者は抜刀しているが、この大柄な男は両腕を下げたまま、刀に手もかけていない。

「無粋だねぇ。こんなところに踏み込んでくるなんざ」

 紫苑が遊女に抱きついたまま、振り向いて言った。
 ただ姉に甘えている弟のような、無邪気で可愛らしい顔だ。

 部屋いっぱいに回り灯籠の絵が躍り、半裸の男女が絡み合っている。
 何とも言えない幻想的な空間に、抜刀している二人は息を呑んだ。

 この男は、本当に自分たちが追っている殺し屋なのだろうか。
 あまりに無防備過ぎる。

 遊郭の客は、店の入り口で刀を預けるし、ここにはその他武器になりそうなものなどどこにもない。
 今まで何度となく送り込んだ刺客を、ことごとく殲滅してきた殺し屋が、こんな無防備な姿を曝すものだろうか。
 着物を着ているならまだしも、今目の前の男は、ほぼ裸である。
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