彩華
「そんな簡単にやれると思わないで欲しいね」

 そう言うと、紫苑は血濡れの簪をぺろりと舐めた。
 白い素肌に血が飛び散り、彼岸花が咲いたようだ。

「ど、どうします」

 刀を構えたまま、若者は少し前の大柄な男に聞いた。
 異様な雰囲気に、刀の切っ先が震えている。
 それを見て取り、大柄な男は少し顎を動かした。

「奴の左に控えろ」

 刀での斬り合い時、左後方からの攻撃は最も防ぎにくい。
 ただこの男にそれが通用するか。

 今の攻撃から見ても、何を使うかわかったものではないのだ。
 だが右利きである限り、何を使おうと同じはずだ。

 若者は頷き、少し動いて紫苑の左に回り込んだ。

「行くぞ」

 大柄な男が、刀の柄に手をかけて抜刀体勢を取った。
 紫苑の目が、僅かに細められる。
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