毛づくろう猫の道しるべ

 モヤモヤと抱え込み、上手くいかない毎日にイライラとしてしまい、それと同時に明日はどうなるかという不安も湧くし、どうしようもなく疲れ果てながら帰路についていた。

 家に戻ったとたん気の緩みで、普段の素の部分が飛び出してしまう。

 ストレスが溜まっているから乱雑に靴を脱ぎ、どたどたと廊下を歩いてキッチンに飛び込んだ。

 八つ当たり的な部分もあったが、一番自分の感情に素直になった姿でもあった。

「あーもうやだやだ」

 鞄を適当に床に置いたあと、私は冷蔵庫を開け、冷やしてあった麦茶のピッチャーを手に取り、戸棚からグラスを取り出すとそれをコポコポと注いだ。

 ピッチャーも手にしたまま、グラスを口許にもっていき、仁王立ちで一気にごくごくと息継ぎなしに麦茶を喉に流し込む。

 その後は肺に溜まっていた空気を鯨のように吐き出した。

 それではまだ足りないと、再びグラスにお茶を注ぐ。
 まるで自棄酒のように、無理して再び飲んでいた。

 しかし二杯目はグラス半分を飲んだ頃に、突然むせて咳き込んでしまった。

 腰を屈め苦しい思いをしながら、グラスをキッチンカウンターに置き、ピッチャーをまた冷蔵庫に戻してバタンと扉を閉めた。

 冷蔵庫の扉を背中で押さえたまま、咳き込んでいると後ろから声を掛けられた。

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