毛づくろう猫の道しるべ
柚実はそんな私達を注意しながら傍観している。
どちらにも肩入れせずに、あくまでも中立を保っているのだろうが、柚実のお蔭でまだ私達三人グループは一応形を保っている。
柚実がどちら側かにつけば、私達三人グループは崩壊するだろう。
ましてや私側につくとも思えないので、この危うい関係は紙一重で柚実のクールな性格が功を奏しているといっても過言ではない。
私が辺に意識して避けさえしなければ、私は柚実という助け舟にかろうじて手を掛けられる状態だった。
柚実は決してその船に乗せようとしないけども、それでも充分私を助けてくれているのかもしれない。
希莉が他の誰かと楽しそうに話している姿を見ていると、なんだヤキモチがでてきてしまう。
あそこにいたのは自分なのに。
もうやり直せないのだろうか。
だけど、ここまで自分を蔑ろにされて、腹が立つ気持ちも少なくともある。
自分は一生懸命希莉のためにと思って接してきたのに、出渕先輩の手紙を言付かっただけで気に入らないからとここまで許してもらえないのが悔しい。
友達なら少しの事ぐらい我慢しても良いんじゃないだろうか。
私は一杯我慢してきたんだから。
「ねぇねぇ、あれから草壁先輩とどうなったの?」
相田さんが、いかにも全てが知りたくてたまらないニヤついた低俗な笑みを浮かべて、訊いてきた。
悩んでいる時にこの相田さんの質問はいらっとしてしまったが、その件も大変な事になってるだけに、この場に持ち出されると二重に重たいものが体を縛り付けたような気分だった。
私が言葉に詰まっているのを、もったいぶっていると思ったのか、中には「隠さなくてもいいのに」と意地悪も入った言い草をする人もいた。
かと思えば羨望の眼差しで素直にワクワクしてる人もいる。
私もまた悩みながらも、草壁先輩という高貴な身分の存在と接点を持ったことで一つ頭抜けた優越感も同時に湧いたり、一筋縄ではいかないこの感情の複雑さが嫌になってきた。
いくつもの感情の波が一気に押し寄せては引いて、また押し寄せる不安定さだから、それがどういう状況でどっちに転ぶか自分でもコントロール不可能だった。
もし誰かが私を囃(はや)し立てたり、一目を置いて持ち上げたら、悩みを隠して、私は簡単に有頂天になってベラベラと草壁先輩との事を自慢気に話したことだろう。
ちょっと粋がって図に乗るようなお調子者に変貌を遂げる優越感が芽生えると、それを誇示したくなって鼻にかけてしまう瞬間がそこにあった。
だけどこの時はどこかでブレーキがかかった。
なぜなら、ふと視線を感じてそっちを何気に見たら近江君と目が合ったからだった。
どちらにも肩入れせずに、あくまでも中立を保っているのだろうが、柚実のお蔭でまだ私達三人グループは一応形を保っている。
柚実がどちら側かにつけば、私達三人グループは崩壊するだろう。
ましてや私側につくとも思えないので、この危うい関係は紙一重で柚実のクールな性格が功を奏しているといっても過言ではない。
私が辺に意識して避けさえしなければ、私は柚実という助け舟にかろうじて手を掛けられる状態だった。
柚実は決してその船に乗せようとしないけども、それでも充分私を助けてくれているのかもしれない。
希莉が他の誰かと楽しそうに話している姿を見ていると、なんだヤキモチがでてきてしまう。
あそこにいたのは自分なのに。
もうやり直せないのだろうか。
だけど、ここまで自分を蔑ろにされて、腹が立つ気持ちも少なくともある。
自分は一生懸命希莉のためにと思って接してきたのに、出渕先輩の手紙を言付かっただけで気に入らないからとここまで許してもらえないのが悔しい。
友達なら少しの事ぐらい我慢しても良いんじゃないだろうか。
私は一杯我慢してきたんだから。
「ねぇねぇ、あれから草壁先輩とどうなったの?」
相田さんが、いかにも全てが知りたくてたまらないニヤついた低俗な笑みを浮かべて、訊いてきた。
悩んでいる時にこの相田さんの質問はいらっとしてしまったが、その件も大変な事になってるだけに、この場に持ち出されると二重に重たいものが体を縛り付けたような気分だった。
私が言葉に詰まっているのを、もったいぶっていると思ったのか、中には「隠さなくてもいいのに」と意地悪も入った言い草をする人もいた。
かと思えば羨望の眼差しで素直にワクワクしてる人もいる。
私もまた悩みながらも、草壁先輩という高貴な身分の存在と接点を持ったことで一つ頭抜けた優越感も同時に湧いたり、一筋縄ではいかないこの感情の複雑さが嫌になってきた。
いくつもの感情の波が一気に押し寄せては引いて、また押し寄せる不安定さだから、それがどういう状況でどっちに転ぶか自分でもコントロール不可能だった。
もし誰かが私を囃(はや)し立てたり、一目を置いて持ち上げたら、悩みを隠して、私は簡単に有頂天になってベラベラと草壁先輩との事を自慢気に話したことだろう。
ちょっと粋がって図に乗るようなお調子者に変貌を遂げる優越感が芽生えると、それを誇示したくなって鼻にかけてしまう瞬間がそこにあった。
だけどこの時はどこかでブレーキがかかった。
なぜなら、ふと視線を感じてそっちを何気に見たら近江君と目が合ったからだった。