毛づくろう猫の道しるべ
 そのサクライさんが私を見て、ニコッと微笑み「こんにちは」と挨拶する。

 私は頭を下げるだけで精一杯だった。

「この人が新しいマネージャーになってくれる方ね」

 えっ、ちょ、ちょっと待って。

 まだ返事してないし、断ろうとしているんだけど。

「そうなんだ。いい子だろ」

 宗谷先輩が答えた。

「いい人が見つかってよかったわ。これで私も安心して辞められるわ」

 やっぱりサクライさんはマネージャーを辞めてしまう。

 きっと草壁先輩絡みでサッカー部に居づらくなったに違いない。

「あーあ、ひまりちゃんが辞めちゃうのは残念だな。草壁、お前も引きとめろよ」

「仕方がないだろ。本人の都合なんだから」

 草壁先輩が他の部員の言葉に戸惑っている。

 なんだか気まずいものを感じた。

 サクライヒマリ。

 それが彼女の名前らしい。

 なんだか桜と向日葵を同時に思い浮かべてしまった。

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