毛づくろう猫の道しるべ
「でも新しいマネージャーもかわいいし、まっ、いいか。やっぱりマネージャーは可愛い方がいいもんな」
えっ、かわいい? もしかして私のこと?
いや、それよりも驚くべき問題はすでに私はマネージャーにされちゃってることだった。
冗談じゃない!
「ちょ、ちょっと待って下さい。私、そのまだきっちりと返事を」
「さっき、できまーすっって返事したじゃん。それで決まりでいいよ。俺達は賛成だし、なぁ、みんな」
宗谷先輩は強引に肯定に持っていった。
「おぅ!」
「あー、俺もこれで紹介した甲斐があった」
草壁先輩まで役立ったと言い切っている。
なんで、あれが『できまーす』と聞こえたのよ。
もうタイミングが悪すぎて、自分の行きたくない方向に流されていく。
しかも私には断る隙を与えずになぜか皆、力ずくでそうもっていこうとしてるように思える。
私が、あわあわしているうちに、この問題はすでに流れていってしまった。
「しかし、今日は本降りだな」
「天気には勝てませんからね」
「体育館も混んでるだろうな」
「雨の日はどこのクラブも集まって込み合うからな。俺達はここが使えてラッキーだ。ここでならボールを使って動き回れるからな。それじゃそろそろ始めるぞ、まずはストレッチからだ」
それぞれが体を動かし始め、慌しくなっていった。
サクライさんも宗谷先輩と草壁先輩と向き合って何かを話し込み、私の存在はすでに空気のようになり、誰も気にする人がいなかった。
私一人だけがおどおどし、断りたいのにすでにタイミングを逃して、この輪の中に入っていけずに、口許だけをわなわなと震わして突っ立っている。
場違いな場所に迷い込んでしまって、恐ろしくて毛穴が開ききりぞっとし、絶体絶命な気分で私は頭が真っ白になって、意味もなくそこに突き刺さってるような状態だった。
「えっと、名前は?」
宗谷先輩たちと話し終えたサクライさんが私の元にやってきた。
「は、はい。私、遠山千咲都です。あ、あの」
「遠山さんね。そしたら、これから色々と説明するからついて来て」
「えっ」
サクライさんは扉を開け、有無を言わさずスタスタと部屋を出て行ってしまった。
また後をついて行かざるを得なくなってしまい、私は慌てて追いかけた。
廊下に出たところで私はすがるように声をかけた。
「あ、あの、そのサクライ先輩」
呼べば静かに振り返った。
「私、まだそのはっきりと返事してなくて、そのどうしていいか分からなくて」
「えっ、すでに決まったんじゃなかったの?」
サクライさんが非常に驚いて、露骨に眉根が狭まった困った顔を私に見せた。
苛立った気がジワリとにじみ出ている。
私はそれにビビッてしまい、おどおどしてしまった。
「ん、もう、それじゃさっさとはっきり決めて。どうするの? やるの? やらないの? どっちなの?」
脅しが入った威圧感のある声は責められているようでなんだか怖い。
というより、自分が先輩だから、下級生には強気になれるのだろうか。
それとも草壁先輩がらみで、私はもしかして嫌われているのだろうか。
相手が上級生で自分の立場が弱い事もあり私は言葉を失い、どう処理して良いのか許容範囲を超えすぎて壊れてしまった。
こうなると、ひたすら謝り、全てを諦めて従ってしまう。
この時点で断ることなどできそうになかった。
「すみません。やります。頑張ります」
気持ちとは裏腹に責任を感じて、口からただ言葉が出ているだけだった。
えっ、かわいい? もしかして私のこと?
いや、それよりも驚くべき問題はすでに私はマネージャーにされちゃってることだった。
冗談じゃない!
「ちょ、ちょっと待って下さい。私、そのまだきっちりと返事を」
「さっき、できまーすっって返事したじゃん。それで決まりでいいよ。俺達は賛成だし、なぁ、みんな」
宗谷先輩は強引に肯定に持っていった。
「おぅ!」
「あー、俺もこれで紹介した甲斐があった」
草壁先輩まで役立ったと言い切っている。
なんで、あれが『できまーす』と聞こえたのよ。
もうタイミングが悪すぎて、自分の行きたくない方向に流されていく。
しかも私には断る隙を与えずになぜか皆、力ずくでそうもっていこうとしてるように思える。
私が、あわあわしているうちに、この問題はすでに流れていってしまった。
「しかし、今日は本降りだな」
「天気には勝てませんからね」
「体育館も混んでるだろうな」
「雨の日はどこのクラブも集まって込み合うからな。俺達はここが使えてラッキーだ。ここでならボールを使って動き回れるからな。それじゃそろそろ始めるぞ、まずはストレッチからだ」
それぞれが体を動かし始め、慌しくなっていった。
サクライさんも宗谷先輩と草壁先輩と向き合って何かを話し込み、私の存在はすでに空気のようになり、誰も気にする人がいなかった。
私一人だけがおどおどし、断りたいのにすでにタイミングを逃して、この輪の中に入っていけずに、口許だけをわなわなと震わして突っ立っている。
場違いな場所に迷い込んでしまって、恐ろしくて毛穴が開ききりぞっとし、絶体絶命な気分で私は頭が真っ白になって、意味もなくそこに突き刺さってるような状態だった。
「えっと、名前は?」
宗谷先輩たちと話し終えたサクライさんが私の元にやってきた。
「は、はい。私、遠山千咲都です。あ、あの」
「遠山さんね。そしたら、これから色々と説明するからついて来て」
「えっ」
サクライさんは扉を開け、有無を言わさずスタスタと部屋を出て行ってしまった。
また後をついて行かざるを得なくなってしまい、私は慌てて追いかけた。
廊下に出たところで私はすがるように声をかけた。
「あ、あの、そのサクライ先輩」
呼べば静かに振り返った。
「私、まだそのはっきりと返事してなくて、そのどうしていいか分からなくて」
「えっ、すでに決まったんじゃなかったの?」
サクライさんが非常に驚いて、露骨に眉根が狭まった困った顔を私に見せた。
苛立った気がジワリとにじみ出ている。
私はそれにビビッてしまい、おどおどしてしまった。
「ん、もう、それじゃさっさとはっきり決めて。どうするの? やるの? やらないの? どっちなの?」
脅しが入った威圧感のある声は責められているようでなんだか怖い。
というより、自分が先輩だから、下級生には強気になれるのだろうか。
それとも草壁先輩がらみで、私はもしかして嫌われているのだろうか。
相手が上級生で自分の立場が弱い事もあり私は言葉を失い、どう処理して良いのか許容範囲を超えすぎて壊れてしまった。
こうなると、ひたすら謝り、全てを諦めて従ってしまう。
この時点で断ることなどできそうになかった。
「すみません。やります。頑張ります」
気持ちとは裏腹に責任を感じて、口からただ言葉が出ているだけだった。