毛づくろう猫の道しるべ
 これじゃ私が勝手に会いに来たということなのだろうか。

 だけどあんなメモをみたら、誰だって呼びだされてると受け取ると思う。

 それをどうして呼び出してないと言い切れるのだろうか。

「私をからかってるの?」

 ついムキになってしまう。

「ほら、やっぱり遠山は怒ってる」

「こんな風に訳のわからない事したら怒るわよ」

「それでいい」

「ちょっと、何よ。どういうつもり?」

「素直になれってことさ。遠山は俺と係わったことで要らぬことを押し付けられただろ。手紙の事やマネージャーの事とか」

「えっ、それは」

「そして俺に恨みがある」

「恨み?」

「ないのか、恨み」

「そんな事言われても」

「じゃあ、逆にそんな風に思った事ないのか?」

「それは……」

 もちろんある。

 大ありだ。

 全てはみな、近江君に係わったから始まった。

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