毛づくろう猫の道しるべ
「そうね。この調子じゃ午後も雨が降りそうだね。それに止んでも運動場は水溜りで使えそうもないし」

 部活の話はなんとか普通に話してくれてほっとした。


「どうする。いつものあの場所、早めに使用許可取る?」
 
私はすぐにでもしたかった。


「それじゃ私がしておく」

「えっ、加地さんが? いいの? 一緒に行こうか?」

「そんなの一人でできるわよ」

「それなら、いいんだけど。それじゃお願いします」

 とりあえずは無事に済んでほっとする。


 下駄箱に入っていた手紙、岡本さんの証言、この先も思いやられそうだけど、加地さんがそういう人だとはっきり分かってしまうと、おどおどすることはなくなった。

 でも私は加地さんが嫌がらせすることを知っていたのに、その後の予測ができなかったことは大いに抜けていた。


 もう少し、不測の事態を想定すべきだった。

 まだこの時は他の事に気を取られてそれどころじゃなかった。


 
 草壁先輩が教室に現われたことで変化を感じたのは私だけじゃなく、近江君もしっかり影響を受けていた。

 近江君の場合、その日はずっと機嫌が悪そうにイライラしている様子で、休み時間一人で本を読もうとしても集中できずに、時々虚空を見たり机に突っ伏したりしている。


 私もその様子を気にして見ていたから、時々近江君と目が合ったが、近江君はすぐに逸らしたり、急に席を立ったりして部屋から出て行った。


 いつもと様子が違うその態度に、私は気になってランチが終わった昼休み、近江君を探しに図書室に向かった。

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