毛づくろう猫の道しるべ
10
「千咲都ちゃん、ここで何してるの?」
「く、草壁先輩」
「何をコソコソしてるんだい」
「いえ、別に、その、ぶつかってすみませんでした」
再び謝るも、草壁先輩は前方にいる近江君と櫻井さんに視線を向けていた。
「もしかして、ハルと櫻井が居たから遠慮してコソコソしてたんだ」
「いえ、そんな」
「いいの、いいの、気にしなくても。丁度良い機会だ。おいで」
草壁先輩にいきなり手をつかまれ、しっかりと握られてしまった。
そのまま引っ張られ、近江君と櫻井さんの前に連れられた。
そして四人で座談会でもするように、二人の前の空いている席に、私も座らされ、その隣に草壁先輩も腰掛けた。
「あら、遠山さん」
櫻井さんに声を掛けられ、私は頭をぺこりと下げた。
その隣の近江君の不機嫌な表情が怖い。
「千咲都ちゃんも偶然図書室に来ててさ、俺が引っ張ってきた」
草壁先輩がまだ私の手を握っていた。
それをわざと二人の前で見せるから、私は恥かしくて俯いた。
「あら、草壁君と遠山さんはそういう関係だったの?」
「いえ、その、ち、違い……」
私が否定しようとしたその言葉を上書きするように、草壁先輩は言った。
「うん。いずれそうなる。ねぇ、千咲都ちゃん」
「えっ、でも、私、まだ、その」
「今、俺、じらされてるんだ。千咲都ちゃんは結構、小悪魔かも。まあ、お預けくってる状態も、ちょっと燃えるけどね」
かつて櫻井さんに辛い恋をしたからって、いくらなんでも本人の前でわざわざそんな事をいわなくても。
「お二人、結構お似合いよ」
櫻井さんもさらりと言うけど、それ違うから。
私はぶんぶんと首を振っていた。
近江君は何も突っ込んでこなかったが、前方をチラリと見れば、呆れているようで、心なしかイラついていた。
でもなぜ、近江君はこうもして上級生の人達と付き合いがあるのだろう。
しかも近江君は、怯むことなくこの上級生達と普通に接している。
その疑問は草壁先輩の何気ない言葉で解けた。
「く、草壁先輩」
「何をコソコソしてるんだい」
「いえ、別に、その、ぶつかってすみませんでした」
再び謝るも、草壁先輩は前方にいる近江君と櫻井さんに視線を向けていた。
「もしかして、ハルと櫻井が居たから遠慮してコソコソしてたんだ」
「いえ、そんな」
「いいの、いいの、気にしなくても。丁度良い機会だ。おいで」
草壁先輩にいきなり手をつかまれ、しっかりと握られてしまった。
そのまま引っ張られ、近江君と櫻井さんの前に連れられた。
そして四人で座談会でもするように、二人の前の空いている席に、私も座らされ、その隣に草壁先輩も腰掛けた。
「あら、遠山さん」
櫻井さんに声を掛けられ、私は頭をぺこりと下げた。
その隣の近江君の不機嫌な表情が怖い。
「千咲都ちゃんも偶然図書室に来ててさ、俺が引っ張ってきた」
草壁先輩がまだ私の手を握っていた。
それをわざと二人の前で見せるから、私は恥かしくて俯いた。
「あら、草壁君と遠山さんはそういう関係だったの?」
「いえ、その、ち、違い……」
私が否定しようとしたその言葉を上書きするように、草壁先輩は言った。
「うん。いずれそうなる。ねぇ、千咲都ちゃん」
「えっ、でも、私、まだ、その」
「今、俺、じらされてるんだ。千咲都ちゃんは結構、小悪魔かも。まあ、お預けくってる状態も、ちょっと燃えるけどね」
かつて櫻井さんに辛い恋をしたからって、いくらなんでも本人の前でわざわざそんな事をいわなくても。
「お二人、結構お似合いよ」
櫻井さんもさらりと言うけど、それ違うから。
私はぶんぶんと首を振っていた。
近江君は何も突っ込んでこなかったが、前方をチラリと見れば、呆れているようで、心なしかイラついていた。
でもなぜ、近江君はこうもして上級生の人達と付き合いがあるのだろう。
しかも近江君は、怯むことなくこの上級生達と普通に接している。
その疑問は草壁先輩の何気ない言葉で解けた。