毛づくろう猫の道しるべ
 私は半ば軽蔑する眼差しを向けて、常盤さんを一瞥した。

 それに簡単に反応し、常盤さんの怒りがどうやら収まらないのが睨む目の強さで伝わってきた。

 こうなると常盤さんは苛立ちから行動にでてしまった。


「つべこべ言うんじゃないわよ。このぉ!」


 常盤さんが奇声を上げて私を突き飛ばそうとする。

 上手い具合にひらりとかわせたので、そのまま逃げた。


 その時、常盤さんは反動で、後ろからやってきた歩きスマホをしている男子生徒とぶつかっていた。

 精神をきたした人に構っていたら不幸になるだけなので、私は知ったこっちゃないと、そのままどんどん先を急いだ。

 腹も立って嫌な気分だったが、学校の門を潜った時は回避できただけよしとしようと思えるようになっていた。


 そして下駄箱で自分の上履きを取ろうと手を伸ばせば、またそこに『偽桜井さん』からの手紙が入っていた。

 こんな事をしてばれないとまだ思っているのだろうか。


 一応目を通せば、きっちりと場所を確保できなかったことを責め、草壁先輩と仲良くするなと言った僻みが書いてあった。

 加地さんも草壁先輩に憧れているんだろう。


 その怒りを櫻井さんの名前を語って、八つ当たりしている。

 本当はばれている事もわかっているんじゃないだろうか。

 私が何も言わないお人よしということで、好き放題に鬱憤を晴らしているだけなのかもしれない。

 実際波風立てたくないし、私が強く出てこないと分かって露骨にやってるのだろう。


 もしかしたら、岡本さんの時のように私を辞めさせようとしてるのかもしれない。

 加地さんなら、こんな事が平気でできるような気がする。


 常盤さんに続き、加地さんも病的すぎて、嫌になる。


 私はそういうのに疎ましく思われる体質でもあるのかもしれないが、あの二人にとって、力のない格下と位置づけられているのも納得できない。

 同じ土俵には立ちたくないが、やられるままもなんだか嫌だ。

 かといって、一人でどう立ち向かえばいいのかもわからない。


 草壁先輩や櫻井さんに相談したところで、事が大きくなるだけだろうし、陰湿に水面下で嫌がらせされそうな気もする。

 実際草壁先輩は面と向かって庇ってくれたが、常盤さんは怯むことなく、私が一人の時に露骨に攻撃してきている。

 加地さんも同じようなタイプだから、言ったところであの手この手で意地悪をしてきそうに思えた。

 我慢するしかないのだろうか。

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