毛づくろう猫の道しるべ
 それにしても朝からダブルで辛い。

 嫌な気分のまま、教室に入れば、相田さんが走り寄ってきた。

 草壁先輩とその後どうなっているのか気になって仕方がないらしい。


 草壁先輩の話もややこしくなってるだけに、何も言いたくないが、こうやって構ってもらってるだけに、ヘラヘラとして当たり障りなく付き合わないといけないのもつらい。


 相田さんが積極的に私に近づくから回りの友達も引き寄せられて、私は今のところ一人にならずに済んでいる。

 それがなければ、希莉との問題でやりにくい毎日を送ってボッチな高校生活だったかもしれない。


 しかし、ボッチになりたくない理由のために無理に付き合うのも辛い。

 これも希莉が頑固で頑なに私を受け入れてくれないから、余計にややこしくなってこじれてしまっている。


 希莉もいい加減、譲歩してくれればいいのに。

 これだけ長く続いてしまうと私も希莉が恨めしくなってしまう。


 いつまでこの状態を続けるのだろう。

 目が合う度に一応笑ってはいるが、私ばかりが気を遣うのも疲れてきた。

 でもこの負のスパイラルからは抜け出せないから、気弱に笑うことしかできなかった。

 登校時間ギリギリに近江君が大きなあくびをしながら、教室に入ってきたのが目についた。


 近江君はいつも一人だけど、誰も近江君が一人で居ることを気にしないし、どっちかって言えば、一目置いて見ている。


 学力もクラスでトップを争うくらいだし、当たり障りも悪くなく、落ち着いた風貌から邪険に扱う人はいない。

 近江君も何をするにも気兼ねなく堂々としている。


 例え留年がクラス中に知れ渡っても、近江君をバカにする人はいないだろう。

 私も近江君が留年したからと言って、別に気を遣うこともない。

 寧ろ今迄通りに私は近江君と接したいと切望するくらいだ。

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