毛づくろう猫の道しるべ
 このクラスで唯一私が、近江君と一番仲がいいと誇りのように思っていた。

 コソコソと私は近江君の様子を盗み見していた。

 近江君は静かに机について、再びあくびをしながら本を開いている。

 本当はもっと気軽に近江君に近づきたいけど、常に勉強する姿を見てると憚れる。

 こうやって見てるだけでも、なんだか後ろめたいというのに。


 振り返れば、近江君には色々と助けられた。

 ブンジの事も気にかけてくれるし、このクラスでなんとかやっていけるのは、いざという時近江君と接触して話せるからだと思う。

 近江君の前だけはありのままの自分で居られてとても楽なのもいい。

 それに甘えて、近江君を頼って昼休み図書室に行く癖がついてしまったが、それがこの先できなくなるなんて思いもよらなかった。


 なぜなら、私の他にも近江君と会う人物が現われてしまったからだった。

 そして新たな真実を知ってしまい、胸が張り裂けそうになった。
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