毛づくろう猫の道しるべ

 昼に雨は小降りになり、放課後には止みそうではあったが、グラウンドがぬかるんでは練習しにくいと判断し、私は前回の失敗を教訓に早めに行動を起こしていた。


 一時間目が終わればすぐ、場所の確保を行い、その足で加地さんに報告も済ませていた。

 加地さんは不機嫌な態度を隠しもせず私に見せ、最後はふんと鼻であしらって不貞腐れていた。


 朝の下駄箱に入っていた手紙の事も含め、これまた腹が立ったが、ここは怒っても火に油を注ぐ効果しかないので、私は我慢した。


 こういう人間は見下したものから何か言われたら、のらりくらりと恣意的に言葉を操って平気で嘘をいって逃れるタイプでもある。

 余程の証拠と証人をつけなければ、やりこめられなかった。


 私のような気弱なものには立ち向かえないから、こちらも戦える材料をまず用意しなければならない。

 しかし、告発したところで、人手不足のマネージャーなだけに、勝手に出て行かれたら一人しか残らない私がしんどいことになる。

 弱みを握られているようで耐えるしかなかった。

 私さえ注意すればなんとか乗り越えられるかもしれない。

 耐える事が美徳となり、加地さんの意地悪が当たり前の事に思えてくるから、私も損な役柄だった。


 そして、昼休み、愚痴の一つでも言いたい、発散したいと、心の拠り所を求めて図書室に向かった。

 やはりそこに行けば近江君がいるという期待を持っていた。

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