毛づくろう猫の道しるべ
9
駅とは違う方向へ、私の腕を引っ張ったまま近江君は歩いていく。
「いい加減に離して」
私が強く振り払おうとする前に近江君はパッと手を離し、勢いが空振りになって前につんのめってしまった。
「まあ、落ち着け」
「落ち着いてもいられないの」
よたつきながら、近江君に引っ張られていた手をもう片方の手で庇うように触れた。
「とにかく、こっちこい」
近江君が入り組んだ路地を入って抜けた先で大通りに出くわした。
車がひっきりなしに通っている。
ビルがポツポツと建ち、周りは見通しがよく、都心へ向かう街の外れと言った雰囲気があった。
街路樹が植えられた広い歩道のその横に、一台の黒いセダンの車が停まっているのが見えた。
近江君はその車めがけて歩いていった。
そして後ろのドアを開け、手招く。
「早く来い」
近江君はさっさとその車に乗り込むので、私は小走りに掛けていった。
「ちょっと、どういうこと」
「いいから、早く乗れ」
「いい加減に離して」
私が強く振り払おうとする前に近江君はパッと手を離し、勢いが空振りになって前につんのめってしまった。
「まあ、落ち着け」
「落ち着いてもいられないの」
よたつきながら、近江君に引っ張られていた手をもう片方の手で庇うように触れた。
「とにかく、こっちこい」
近江君が入り組んだ路地を入って抜けた先で大通りに出くわした。
車がひっきりなしに通っている。
ビルがポツポツと建ち、周りは見通しがよく、都心へ向かう街の外れと言った雰囲気があった。
街路樹が植えられた広い歩道のその横に、一台の黒いセダンの車が停まっているのが見えた。
近江君はその車めがけて歩いていった。
そして後ろのドアを開け、手招く。
「早く来い」
近江君はさっさとその車に乗り込むので、私は小走りに掛けていった。
「ちょっと、どういうこと」
「いいから、早く乗れ」